パウロは、アレオパゴスの真ん中に立って言った。「アテネの皆さん、あらゆる点においてあなたがたが信仰のあつい方であることを、わたしは認めます。道を歩きながら、あなたがたが拝むいろいろなものを見ていると、『知られざる神に』と刻まれている祭壇さえ見つけたからです。それで、あなたがたが知らずに拝んでいるもの、それをわたしはお知らせしましょう。世界とその中の万物とを造られた神が、その方です。この神は天地の主ですから、手で造った神殿などにはお住みになりません。(使徒の働き十七章二十二~二十四節)

使徒の足跡

アレオパゴスの丘(ギリシャ・アテネ)Areopagus Hill (Greece,Athen)

新約聖書の使徒行伝には、アレオパゴスの丘で使徒パウロがギリシャ人に説教を行ったと記されています。アレオパゴスの丘の登り口には、使徒パウロの足跡を偲ぶ石碑が建立されています。丘の頂からは遠く一面にアテネ市内が見渡せます。当時、アクロポリス一帯はギリシャの政治的中心でした。アレオパゴスの丘には評議所が存在したと言われています。が、今では硬い岩肌の丘が残るのみです。すぐ傍の崖の上には幾多の星霜を経てパルテノン神殿が威容を示し、往年の栄華を忍ばせています。

コリント運河(ギリシャ・コリントス)Corinth Canal (Greece,Korinthos)

コリントはパウロが直接伝道した足跡であり、また、コリント教会が立てられた場所でもあります。新約聖書では、当時のコリントは繁栄した都市であるとともに神殿娼婦や姦淫が横行した性的に乱れた街として描写されています。コリントには今も悠久の歴史の面影を残す遺跡が残されています。すぐそばにはコリント運河が流れています。その遠影には、エメラルドグリーンの水面の上を、あたかもスローモーションのように船舶がゆったりと行き来していました。

エフェソス遺跡(トルコ・クサダシ)Efes Orenyeri (Turkey,Kusadasi)

使徒パウロが福音を述べ伝えていた頃のエフェソはアジア州(現在のトルコ)第一の大都市でした。当時のエフェソにはアジア州全体、そしてローマ帝国に名を轟かす女神アルテミスの神殿がありました。現在のエフェソ(クサダシ)は、トルコ半島先端の地中海に面した港湾都市です。そこには今でもアルテミス神殿や巨大な図書館跡等の遺跡が残されています。クサダシにはイスタンブール等から陸伝いに移動することもできますが、私はエーゲ海クルーズ船にてギリシャ側から地中海を経由し上陸しました。         

スミルナ遺跡(トルコ・イズミール)Smiruna (Turkey,Izmir)

イズミールはイスタンブール、アンカラに次ぐ、トルコ第三の人口を誇る大都市です。現在のイズミールはエーゲ海に面した港町で、気候温暖な南国情緒豊かな街です。イズミールは 地中海貿易の要所として繁栄し、新約聖書の時代、かつてスミルナと呼ばれ、黙示録に登場する七つの教会の一つがあった場所です。スミルナの中心から坂道を登った高台にある住宅街の一角に、スミルナ遺跡が今も残ります。土中に埋もれた地下宮殿の規模は広大で、かつての繁栄を偲ばせています。古代の街並みを山積した石灰岩の瓦礫の背景にはコンクリートの頑丈なビルが望み、現在と過去との不思議なコントラストを醸し出ています。

ペルガモン遺跡(トルコ・ペルガマ)Pergamon (Turkey,Perugama)

ペルガモはトルコ半島のエーゲ海に面した先端部に位置する。黙示録に登場する7つの教会の一つ、ペルガモン教会のあった場所である。気候は至って温順で、ここを訪れた時は正月にも拘らず、はや春を思わせる陽気だった。しかし、遺跡を歩く間中も、肌を押す風が吹き荒れていた。常に海からの強風が吹き上げる場所としても有名で、ペルガモの地名もそのような気候に由来するらしい。その所為か、海岸沿いには大きなプロペラを旋回させた風力発電所が林立していた。

マメルティヌスの牢獄(イタリア・ローマ)Carcere Mamertino (Italy,Rome)

晩年のパウロは、皇帝へ上訴した裁判を受けるまでの間、軟禁状態となりながらも伝道を続けました。その後、この牢獄に収監され、所謂獄中書簡と呼ばれるエフェソ人への手紙等の新約聖書の書簡を記したと言われています。パウロが繋がれていたとされる牢獄は、今はフォノ・ロマーノと呼ばれるローマ遺跡群の一角にあります。